豊中市のA様より、淡交社の専門書『棚の扱いと鑑賞 全12冊』が届きました。他界されたおばあさまのお持ち物なんだそうです。お茶を嗜むご家族がおられないとのことで、お買い取りの流れとなりました。

■お客様のお悩み

ご相談いただいたのは、淡交社の専門書『棚の扱いと鑑賞 全12冊』。
A様のお宅には、かつておばあさまが日々お稽古をされていたという立派な茶室があったのだそうですが、おばあさまが他界され、茶道を嗜む家族が居ないことから茶室は仕事部屋へと改築。お茶道具や掛軸、小物、そして専門書などを手放すことにしたと言います。

そこで、「大切な思い出が詰まった品だからこそ、処分ではなく必要とする方に引き継いでくれるところに頼みたい」と考え、当店をお選びいただいたのだと教えていただきました。ありがたい限りです！
専門的な本ですから、価値についてなど、しっかりとお伝えできるよう準備を整えることにいたしました。

■スタッフの提案

経年によるヤケや傷みは、外側にもほんのわずか。中を開いてもページの状態は良好ですし、書き込みなどもありません。そして何より、全巻揃っていることは大きなポイントだと言えます。
A様には「茶道専門書は、後継者の方、学び直しをしたい方などから一定の需要があること」と「特に淡交社のシリーズは体系的で人気があること」をご説明しました。
おばあさまの学びの跡を、そのまま次の読者へ渡せることは、本の大きな価値だと言えます。そのこともお伝えすると、安心されたご様子を垣間見ることができました。

＜古本豆知識＞

茶道の書籍、とくに淡交社の専門シリーズ（今回は、棚の扱いと鑑賞）は、発行年代が古くても需要が安定しています。というのも、内容が茶道のお点前などではないため、時を経て大きく変わるような内容ではなく、古い本でも学びの本質に直結していることによります。
さらに今回のシリーズは、棚ごとの由来や飾り方、場面に応じた使い分けなど、実践者が知りたい内容が詰まっています。全巻揃いはあまり出ないため、さらに状態が良いとなると、コレクターやお弟子さん垂涎の本だと言えます。

■対応内容

状態と保管状況、そして全12冊揃いの希少性を評価し、1,500円でお買取りをさせていただきました。「発行から時間が経っているものの、内容の価値は今も十分に活きている」ことをA様にご説明したところ、ご納得いただきました。
このシリーズは、再び茶道を学びたい方や既に嗜んでおられる方の学び直しとして、すばらしい教材になる本と言えます。きっと、今後もその役目を果たしてくれると思います。

■お客様のお声

「祖母が長く大切にしていた茶室の本でしたので、ただ処分するのは心苦しく感じていました。でも、活用できない者がずっと持っているのも違う気がして、活かしてくれそうな書店を探していた時に、下草書店を見つけて依頼をしました。
今回、必要な方のところに渡るのだと聞いて、安心しました。心の荷がおりたような気がします。
実は、茶室を仕事部屋にすることに少し後ろめたさがあったのですが、今回、『役目を終えた本が次の場所でまた生きる』と言ってもらえて嬉しかったです。相談して良かった！」と、A様より嬉しいお言葉をいただきました。

■スタッフのひとこと

A様のおばあさまが長年向き合ってこられた茶道の世界。その一部を担っていた本たちを、次の読者へつなぐお手伝いができて大変光栄に思います。
茶室から仕事部屋へ。住まいも、年月を経てどんどん変化していくもの。そのような中で下す「手放す」という選択は、寂しさが伴いますよね。これは、仕方がありません。
でも、今回のような活かし方により、手放す方の“思いを整理する”ことが可能です。
今回は、Ａ様のお役に立てて本当に嬉しい限り。
本たちが今後、誰かの学びのそばでそっと力を発揮できるよう、今後もしっかりと手助けをしていきたいと思います。

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