生年 1889年8月1日
没年 1962年3月26日
日本の詩人・小説家。石川県金沢市出身。
別号に「魚眠洞」、「魚生」、「殘花」、「照文」。
別筆名に「秋本 健之」。
日本芸術院会員。
生後すぐ養子に出されるも、養母により高等小学校を中途で退学させられてしまう。金沢地方裁判所で給仕として勤めていた頃、文学に関心を抱き、上京。しかし生活が苦しいことや、出生や学歴などを理由とした失恋を繰り返し、東京と金沢を往きつ戻りつするようになる。とても辛く悲しい経験ではあるが、この経験こそが作品に強く生かされている。
作品例
『室生犀星全集』全13巻・別巻1 1936年
『室生犀星作品集 』全12巻 1958年
『全詩集』限定版と普及版で全1巻 1962年
『室生犀星全集 』全12巻・別巻2 1964年
『室生犀星未刊行作品集』全6巻 1986年
『室生犀星童話全集 』全3巻 1978年
『全詩集』全3巻 1978年
『室生犀星全王朝物語』上下巻 1982年
『室生犀星句集 魚眼洞全句』1977年
ひとこと
室生犀星の詩に、大好きな作品がある。以下。
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きのふ いらつしつて下さい。
きのふの今ごろいらつしつてください。
そして昨日の顔にお逢ひください、
わたしくしは何時(いつ)も昨日の中にゐますから。
きのふのいまごろなら、
あなたは何でもお出来になった筈です。
けれども行停(ゆきどま)りになったけふも
あすもあさっても
あなたにはもう何も用意してはございません。
どうぞ きのふに逆戻りして下さい。
きのふいらつしつてください。
昨日へのみちはご存じの筈です。
昨日の中でどうどう廻りなさいませ。
その突き当たりに立つてゐらっしゃい。
突き当たりが開くまで立ってゐてください。
威張れるものなら威張って立つてください。
(表記不統一は原文まま)
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これはきっと別れの詩なのだと思っている。
それも、恋愛の別れではなく、生死による別れなのではないかと。
没年の6年前に書いた詩が、なんとも物悲しく、でも力強く感じられて、たまらなく好きな作品。
詩においては、何かひとつ好きな作品を見つけ、そのひとつをじっくりと掘り下げてみるというのも、素敵な読み方だと思う。必ずしも、一冊すべてを読み、作品すべてを理解しようとしなくてもいいのだから。
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