誕生 1957年1月11日
没年 2008年6月6日
日本の小説家。北海道岩見沢市出身。本名:碓井 小恵子〈うすい さえこ〉。
大学3年の夏、第10回「小説ジュニア青春小説新人賞」へ応募し、佳作受賞。受賞作「さようならアルルカン」で、1977年に小説家デビュー。翌年には初の単行本『白い少女たち』が刊行。その後は月1本のペースで小説を書いて出版社に送りつけるも、次の印税を手にできたのは1980年4月(学園コメディー『クララ白書』にて)刊行の時だった。
1981年、宝塚歌劇をモデルにした漫画『ライジング!』の原作を手がけるため兵庫県宝塚市へ転居。小説家であることを隠してファンクラブに潜入し、若手スターの追っかけをしながら原稿を執筆。1年ほど宝塚で暮らし、ファンクラブ内では準幹部にまで出世する。
1982年、職業作家の道が確立。札幌に戻るも長距離電話代の請求額にショックを受け、1985年に上京。
1980年代から1990年代にかけ、集英社コバルト文庫を代表する看板作家としての地位を確立し、少女小説ブームの立役者として活躍。“少女小説家”という言葉の生みの親となる。
1993年、徳間書店のアニメ情報誌『アニメージュ』で連載した『海がきこえる』が、スタジオ・ジブリでアニメ化される。
1990年代後半は体調を崩しがちになり、目立った執筆活動はない。
2000年代は、漫画賞の選考委員などを行う。
2008年6月6日、肺癌で死去。
2009年10月24日、日本橋学館大学(千葉県柏市)で「氷室さんを偲ぶ一日」が開催される。
2017年、岩見沢市において「氷室冴子青春文学賞」を創設。氷室冴子の功績をたたえたものである。
作品例
<小説>
『白い少女たち』1978年
『さようならアルルカン』1979年
-収録:「さようならアルルカン」「アリスに接吻を」「誘惑は赤い薔薇」「妹」
クララ&アグネス白書
『クララ白書』1980年
『クララ白書ぱーとII』1980年
『アグネス白書』1981年
『アグネス白書ぱーとII』1982年
『恋する女たち』1981年
『雑居時代 上下巻』1982年
『ざ・ちぇんじ! 前編・後編』1983年
シンデレラシリーズ
『シンデレラ迷宮』1983年
『シンデレラ ミステリー』1984年
『少女小説家は死なない!』1983年
『なんて素敵にジャパネスク シリーズ』
『蕨ヶ丘物語』1984年
ボーイ・ガールシリーズ
『なぎさボーイ』1984年
『多恵子ガール』1985年
『北里マドンナ』1988年
『ヤマトタケル』1986年
『冬のディーン 夏のナタリー1-3』1988年 - 1993年
『レディ・アンをさがして』1989年
『碧(あお)の迷宮 上』1989年
『いもうと物語 』1991年
『ターン―三番目に好き』1991年
『銀の海 金の大地シリーズ』
『海がきこえる1-2』1993年
『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ!』2012年
-収録作品:「月の輝く夜に」「ざ・ちぇんじ!」「少女小説家を殺せ!(少女小説家は死なない!番外編)」「クララ白書番外編 お姉さまたちの日々」
『さようならアルルカン/白い少女たち-氷室冴子初期作品集』2020年
-収録作品:「さようならアルルカン」「あなたへの挽歌」「おしゃべり」「悲しみ・つづれ織り」「私と彼女」「白い少女たち」
<エッセイ>
『冴子の東京物語』1987年
『プレイバックへようこそ』1989年
『プレイバックへようこそ2』1990年
『ガールフレンズ―冴子スペシャル』1990年
『マイ・ディア―親愛なる物語』1990年
『いっぱしの女』1992年
『冴子の母娘草(ははこぐさ)』1993年
『ホンの幸せ』1995年
<共著>
『僕が好きなひとへ 海がきこえるより』 近藤勝也 1993年
<戯曲>
『レディ・アンをさがして』
<漫画原作>
『螺旋階段をのぼって』香川祐美
『ライジング!』藤田和子
『ラブ・カルテット』谷川博実
ひとこと
数ある氷室冴子の作品の中で特筆したいのは、『なんて素敵にジャパネスク』。現代的な感覚のヒロインが、平安時代で活躍するという内容で、平安時代の宮廷を舞台にしたロマンティックコメディ。ユニークなキャラクターと軽快なストーリー展開が魅力で、多くの読者を魅了しました。何といっても素晴らしいのは、本来不自然になるはずの現代的な感覚を持つ主人公が、平安時代にいるという設定を並々ならぬ歴史・古典の知識と、それに対する愛情、そして綿密なストーリー構成により、壁を超えてしまったこと。それにより、氷室冴子の描く歴史ものは、「古典の現代的再生」に成功した希有な例として高く評価されているのです。そしてそのことが、その後の少女小説やライトノベル、漫画、そして研究者にも、大きな影響を与えていることを忘れてはいけません。例えば斎宮歴史博物館の榎村寛之によると、「『古典や歴史の研究を志したきっかけは、氷室先生の作品に接したことでした』という研究者は、特に若手の女性研究者を中心に少なくない」とのこと。氷室冴子の作品に接したことが、古典や歴史の世界に足を踏み入れる一歩になったという人は、様々な分野に多くいるのかもしれません。
氷室冴子の作品は、軽妙な語り口と深い人物描写、そして社会や歴史、文化への鋭い洞察が特徴です。今までになかった視点を与えてくれる作品が多く、読者に感動と楽しみを提供してくれます。また、緻密であるからこそ、友情や恋愛、成長の描写に留まらず、その背景にある社会の在り方にも注目が集まる作品ばかり。古い作品であっても、その魅力が色あせることはありません。
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